1月7日に食べる「七草粥」は、無病息災や健康を願う日本の伝統的な行事食です。
七草粥は春の七草を使うのが一般的ですが、地域によっては独自の材料や調理法があり、必ずしも「おかゆ」や「七草」にこだわらない地方もあるようです。
今回は、地域ごとに異なる七草粥について、さまざまな食べ方を紹介します。
地域によって異なる七草粥
七草粥の習慣は、地方ごとに異なる材料や料理法が取り入れられています。
伝統的な春の七草が使えない地域では、その土地ならではの具材で作られた七草粥や代替の料理が親しまれています。
東北地方の「けの汁」や「納豆汁」
東北地方では、冬場に春の七草を手に入れることが難しく、代わりに「けの汁」や「納豆汁」が食べられます。
「けの汁」は青森県津軽地方から秋田県にかけて伝わる郷土料理で、細かく刻んだ大根やニンジン、ゴボウ、ワラビなど、7種類の野菜や根菜を昆布出汁で煮込んだ温かい汁物です。
一方、山形県では「納豆汁」が食べられており、すり潰した納豆に豆腐や厚揚げ、コンニャク、キノコなどを加えた味噌味の汁として親しまれています。
どちらも冬の寒さを乗り越えるため、体を温めるための栄養豊かな料理です。
九州地方の「七草雑炊」や「七草汁」
九州地方の一部では、七草粥が具だくさんの雑炊や汁物として食べられることが多いです。
特に福岡県では「七草汁」と呼ばれる料理があり、七草に加えてブリやクジラ肉、カツオ菜など、地域特有の食材が豊富に使われます。
カツオ菜は、福岡の特産品で、カツオのような風味があることから名付けられ、雑煮にも使われることが多い野菜です。
福岡の七草汁は、海産物の旨みが効いた味噌仕立てで、栄養価が高く豪華な味わいが特徴です。
北陸地方の「ぜんざい」文化
北陸地方、特に石川県や富山県では、おかゆではなく「ぜんざい」や「おしるこ」を七草粥の代わりに食べる習慣があります。
これは、豪雪地帯で冬に新鮮な野草を採ることが難しかったことから生まれた風習です。
ぜんざいに使われる材料は主に鏡餅や小豆で、甘く煮た小豆とお餅を合わせて温かくいただくのが一般的です。
このように、同じ日に食べられる料理でも、地域によっては七草粥とは全く違う形で食べられているのが面白い点です。
七草粥が地域によって違いがある理由
七草粥は1月7日に食べられる「人日の節句」の一環として広まったとされています。
この五節句は、1年の節目として邪気を払い、健康を祈る日として重視されてきました。
五節句の習慣が広まる中で、1月7日に無病息災を願う七草粥が定着したと言われています。
しかし、特に冬の寒さが厳しい地域では春の七草をそろえることが難しいため、現地の旬の野菜や保存食を代用することで、七草粥が独自の発展を遂げてきました。
そのため、東北地方では野菜の乾物や納豆を利用し、九州では手に入る海産物や野菜を活用してきたのです。
七草を食べる習慣がない地域も?
1月7日に七草粥を食べる習慣がない地域もあります。
東北や北海道では、冬場に七草を摘むことが難しいため、七草粥の代わりにその地域の保存食や根菜を使った温かい料理が用意されます。
他にも、栃木県日光市では1月15日までおかゆを食べない風習があるため、七草粥の代わりに「まぜめし」や「菜飯」などが提供されることもあります。
香川県では、大根・カブ・ネギ・春菊・白菜・水菜・高菜の7種類の青菜をおひたしで食べたりなど、必ずしも七草を食べるとは限らないのです。
近年では全国的に七草粥のセットが流通していますが、地域ごとの伝統が根強く残っている地域もあるのです。
まとめ
七草粥は、日本各地で発展してきた多様な文化の一環であり、地域性や食文化の影響で独自の進化を遂げました。
東北地方では保存食を使った「けの汁」や「納豆汁」、九州地方では「七草汁」など、気候や風土に応じた形で工夫されています。
毎年1月7日は、地域ならではの七草粥を味わってみましょう。