「秋の七草」は、古くから日本で秋の風情を楽しむために親しまれてきた草花を指します。
万葉集に登場する歌人・山上憶良が詠んだ七つの草花がもとになっていると言われています。
この記事では秋の七草がいつなのか、種類や簡単な覚え方も紹介します。
秋の七草とは?
秋の七草は、日本の伝統的な草花で秋の自然を感じさせてくれる美しい花々です。
どのようなものなのか詳しく見ていきましょう。
秋の七草はいつ?食べるもの?
秋の七草は7種類ありますが、主に7月から10月にかけて見頃を迎えます。
春の七草が1月7日と明確に決まっていることに対し、秋の七草ははっきりとこの日と決まってはいません。
秋の七草はおおよそ9月中旬から10月上旬の期間
秋の七草それぞれに深い意味が込められており、観賞することで秋の風情を楽しむことができ、古くから親しまれてきました。
万葉集に由来する秋の七草の歴史
秋の七草の由来は、奈良時代の歌人「山上憶良」によって詠まれた万葉集の2つの和歌にあります。
和歌では「秋の野に咲いている草花を指折り数えると七つあった」と詠んでいて、それが
- 萩
- 尾花
- 葛
- 撫子
- 女郎花
- 藤袴
- 桔梗
の7種だったのです。
この和歌が、現在でも秋を代表する草花として受け継がれています。
秋の七草と春の七草の違い
秋の七草は春の七草とは異なり、食べることが目的ではありません。
春の七草は1月7日に七草粥として食べられ、無病息災を祈る風習ですが、秋の七草は美しさを鑑賞することがメインです。
両者ともに日本の四季折々の自然を感じさせてくれますが、春は健康を願う象徴として、秋は風情を楽しむものとしてそれぞれの役割があります。
秋の七草の種類と特徴
秋の七草はそれぞれ特徴があり、美しさや歴史が日本人に深く愛されてきました。
ここでは、七草の種類と特徴を説明します。
萩(はぎ):秋を代表する花
萩は、秋を象徴する花として日本各地で見られます。
細やかな枝にピンクや紫色の小さな花が咲き、秋の風に揺れる姿が特徴的です。
「草冠に秋」と書くことからも、まさに秋を代表する花であり、お彼岸のお供え物にも使われます。
尾花(すすき):お月見の定番
尾花、つまりすすきは、中秋の名月のお供え物として有名です。
風に揺れる穂が動物の尾に似ていることから「尾花」と呼ばれ、秋の風景に欠かせない草花です。
すすきの穂が揺れる姿は、秋の深まりを感じさせます。
葛(くず):食用・薬用としての歴史
葛は、秋の七草の中でも特に実用的な植物です。
葛の根から取れる澱粉は葛粉として和菓子に使われ、風邪のときには「葛根湯」としても馴染み深い存在です。
繁殖力が強く、山野に自生している姿をよく見かけます。
撫子(なでしこ):日本女性を象徴する花
撫子は、淡いピンクの可憐な花を咲かせます。
その姿から「大和撫子」という言葉が生まれ、日本女性の美しさを象徴する花とされています。
古来より、撫子は多くの歌に詠まれてきました。
女郎花(おみなえし):美しさで知られる花
女郎花は、秋に黄色い小さな花を咲かせる優美な植物です。
その美しさから「美女を圧倒する」とされ、この名前が付けられました。
また、薬草としても利用され、古代から親しまれた植物です。
藤袴(ふじばかま):香り高い草花
藤袴は、淡い紫色の花を咲かせ、その香りが桜餅の葉に似ていることから、昔の女性たちはこれを洗髪や香水に使っていました。
現在では絶滅危惧種に指定されており、野生で見ることは少なくなってきています。
桔梗(ききょう):武将に愛された花
桔梗は、美しい五角形の花が特徴で、家紋にも使われたことから武将たちに愛された花です。
また、根には薬効があり、咳止めや痰を取り除く薬としても利用されていました。
秋の七草の簡単な覚え方
秋の七草を覚えるには、語呂合わせを使うと簡単です。
代表的な覚え方の1つ目は、「お好きな服は?」です。
七草の頭文字をとり、
- お →おみなえし(女郎花)
- す →すすき(尾花)
- き →ききょう(桔梗)
- な →なでしこ(撫子)
- ふ →ふじばかま(藤袴)
- く →くず(葛)
- は →はぎ(萩)
と覚えます。
これでスムーズに秋の七草を思い出せるでしょう。
2つ目の覚え方は、「ハスキーなお袋」という語呂合わせです。
- は →はぎ(萩)
- す →すすき(尾花)
- き(ー) →ききょう(桔梗)
- な →なでしこ(撫子)
- お →おみなえし(女郎花)
- ふ →ふじばかま(藤袴)
- く(ろ) →くず(葛)
の順番で覚えることができます。
覚えやすい方法を使えば、秋の七草も親しみやすくなります。
まとめ
秋の七草は春の七草とは異なり、美しさを楽しむための草花です。
万葉集に由来し、秋の風情を楽しむために親しまれてきました。
それぞれの草花には特徴があり、観賞するだけでなく薬用としても利用されてきました。
秋の七草を覚えて、秋の自然をもっと楽しんでみてはいかがでしょうか。